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プロフェッショナルに訊く 第12回 新型窓用防虫フィルム(オプトロン®フィルム)のユスリカ科に対する効果について

1. はじめに

屋外で発生する飛翔性昆虫類が製造施設内に侵入する要因は、

などが知られている。
一方、その対策としては、

の3つが挙げられる。


 照明への誘引飛来は、昆虫類が屋内に侵入する要因のひとつである。多くの昆虫類は近紫外線に誘引されることから、照明への誘引飛来を制御するためにライトコントロールと呼ばれる紫外線制御が行われている。具体的には、照明から昆虫類が反応する波長をおさえるために、窓貼用防虫フィルムやビニールカーテン、防虫ランプなどが商品化されている。

 2009年以降室内照明のLED化が急速に進んできた。省電力・長寿命の次世代照明とされる一般的な白色LEDは紫外線を含まないことが特徴で、光に誘引される昆虫に対して一定の防虫力があるとされている。しかし白色LEDを利用している製造施設で依然として昆虫の飛来が問題になっている。
 当社が白色LEDに飛来する昆虫を分析したところ、種類別ではユスリカ科が最も多いことが判明した。その量は白色蛍光灯と変わらないほどであった。

 今回新たにLED照明用に開発された窓貼用防虫フィルム2色「オプトロン®フィルム オリーブグリーンとローズウッド」の防除効果を確認するため、屋外で白色LEDを用いた誘引試験を行った。

2. 方法

調査地の様子調査地の様子

試験は千葉県で2022年6月に、2日間に分けて行った。光源は白色LED(10W形相当)を使用し、処理区には、照明装置に窓貼用防虫フィルム(オプトロン®フィルム)を装着し、光源の両脇に粘着シートを配置した(図1)。
対照区はフィルムを貼らずガラス板(図2)のみとした。これらの試験装置を5m間隔で処理区と対照区を交互に3台ずつ配置した。いずれの試験日においても光源は日入から約30分後に点灯した。点灯15分後に消灯し、5分間で粘着シートの交換と処理区と対照区の試験装置の位置も入れ替えた。なお、オリーブグリーン色とローズウッド色のオプトロンフィルムをそれぞれ用いた。

図1 試験装置(処理区:フィルム付き)図1 試験装置(処理区:フィルム付き)

図2 試験装置(対照区:ガラス板のみ)図2 試験装置(対照区:ガラス板のみ)

試験の様子
試験の様子

3. 結果

1日目の総捕獲数は処理区で92個体、対照区で434個体、2日目は処理区で109個体、対照区で534個体であった。
捕獲された昆虫類はカメムシ目、ハエ目など全部で11目であった。いずれの調査日においてもユスリカ科は総捕獲数の70%以上で優占した。
これらの捕獲数から算出した新型窓用防虫フィルム(オプトロン®フィルム)の平均誘引阻止率は、ローズウッドおよびオリーブグリーンともに約80%、ユスリカ科でもそれぞれ約80%となり、高い割合で誘引を阻止することができた。
このことからオプトロン®フィルムの防虫効果、特にユスリカ科に対する効果が高いことが確認できた。
ユスリカ科の飛来数は蛍光灯と白色LED との間に差がないことが確認されている。よって白色LED化のみではユスリカ対策としては不十分であることから、防除方法の組合せ=総合的有害生物管理(IPM)の考え方が重要であり、LED照明に対応した窓貼用防虫フィルムは環境的防除のひとつとして有効であると考えられる。

参考文献