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プロフェッショナルに訊く 第16回 食品工場における防鼠対策の重要性と具体的な実践方法

1. はじめに

ネズミを起因とする被害は異物混入事故や食中毒など消費者に関係するものだけでなく、メーカー側にも精神的、経済的な被害があり、最終的にメーカーの信頼性やブランドイメージに悪影響をおよぼしかねません。このような事態を避けるためには、効果的に防鼠対策を行うことが不可欠です。本記事では、食品工場における防鼠対策の重要性と具体的な実践方法について解説します。

2. 防鼠対策の重要性とは?

クマネズミイメージ

・食品工場におけるネズミ被害のリスクと影響

ネズミは食品工場において、異物混入や病原菌の媒介、製品・原料の咬害といったリスクをもたらします。具体例としてネズミ自体をはじめ糞尿や毛が食品に混入することが挙げられます。これらは食品の品質を低下させるだけでなく消費者の健康を脅かす可能性があります。また、ネズミは伸び続ける前歯を削るために何でもかじる習性があり、たまたま電気系統をかじって製造機械の故障や火災に発展させてしまうことがあります。このような事故は工場の生産効率を低下させるだけでなく、大きな経済的損失を招きます。

・工場衛生管理基準における防鼠対策の位置付け

食品事業者に求められるHACCP(危害分析重要管理点)の中で、一般的な衛生管理に関する基準として防鼠対策が求められています。防鼠対策は、工場の品質管理の一環として、計画的かつ継続的に実施されるべきです。

3. 防鼠対策のメインとサブのニーズ

管理者イメージ

・工場管理者が抱える不安と対策の必要性

防鼠対策にはネズミに関する知識と経験が必要不可欠ですが、その知識を身につけて使いこなせるような人材は工場に在籍していないことが普通です。工場にネズミがいるのか?何から手を付ければ良いのか?工場管理者は防鼠対策の必要性が分かっていても具体的にどうすればいいのかわからないものです。一般的には、専門業者と協力して効果的に防鼠対策を進めていくことが必要です。

・経済的リスク、健康リスク、企業イメージへの影響

ネズミを起因とする被害は異物混入事故や食中毒など消費者に関係するものだけでなく、メーカー側にも精神的(従業員が受ける嫌悪感)、経済的(製品や原料の咬害)な被害があり、最終的にメーカーの信頼性やブランドイメージに悪影響をおよぼしかねません。このような事態を避けるためには、効果的に防鼠対策を行うことが不可欠です。

4. 防鼠対策サービスと商品体系

・防鼠対策の全体フロー:調査、設計、対策、効果確認、予防管理

イカリ消毒ではネズミによる多種多様な問題を解決するためにIPM(Integrated Pest Management:総合的有害生物管理)の概念を取り入れた防鼠対策を提案しています。かつては、薬剤に頼った対症療法的な手法が採用されていましたが、IPMでは調査を重視し、調査結果に基づいて効率的で効果的な仕様を設計します。物理的、環境的、化学的の三つの防除手法を柱にした構成で、従来の薬剤偏重な手法に比べ環境・人に対する悪影響が少ない仕様とされています。


大まかなフローをご紹介します。まず工場(敷地、施設内外)の調査を実施、ネズミの生息状況、侵入経路や生息場所を特定します。生息数や施設内の拡散状況に応じて駆除や侵入経路の遮断といった対策を施し、その効果を確認します。同様な侵入、定着が起こらないように環境改善をすすめ、予防管理として定期的な監視活動を行います。

屋外調査イメージ

・対策商品の種類と用途:トラップ・殺鼠剤、予防・監視アイテムの活用

防鼠対策には様々な商品があります。トラップや殺鼠剤は、ネズミを直接駆除するためのアイテムです。一方、超音波防鼠器は、ネズミが施設や特定のエリアへ侵入するのを未然に防ぐために使います。その他動画撮影が可能なセンサーカメラといった監視アイテムもあります。これらアイテムのメリット・デメリットを考えて上手く組み合わせることで、効果的な防鼠対策が可能となります。

5. 効果的な防鼠対策の手法

物理的防除(超音波防鼠器の設置、トラップの配置)

物理的防除には、超音波防鼠器やトラップを用います。超音波防鼠器はネズミの警戒心をかき立てる特殊な音波を発生させることで行動を制御し、施設や特定エリアへの侵入を防ぐ装置です。一方トラップには、粘着タイプやカゴタイプなどがあり、捕獲や忌避を目的にネズミの通り道に設置します。ネズミの行動パターンを理解して配置することで効果的に捕獲することができます。

超音波防鼠器イメージ
超音波防鼠器ソニックバリアⅡ

化学的防除(殺鼠剤の種類と使用方法)

化学的防除は、殺鼠剤を用いてネズミを駆除する方法です。殺鼠剤には即効性のある急性毒タイプや、遅効性ですがネズミがよく食べる蓄積毒タイプのものがあります。それぞれのメリット・デメリットを理解して使いこなす必要があります。ポイントはネズミの習性だけでなく工場内の安全性(汚染防止)も考慮し、適切な場所に設置することです。

殺鼠剤イメージ
殺鼠剤ネオラッテP(イカリ消毒)

環境的防除(侵入経路対策、食品残渣管理)

環境的防除は、ネズミが工場に侵入しにくい環境、たとえ侵入されたとしてもネズミが生息しにくい環境を作ることを目的としています。具体的には、施設内部に通じる隙間をふさいだり、ドアの開閉管理を徹底(開け放しにしないこと)して侵入しにくくすること、隠れ家を与えない整理整頓と餌になる食品残渣を適切に管理する3S(整理・整頓・清掃)の推進です。

施設内に通じる隙間イメージ
施設内に通じる配管の隙間(イメージ)

6. 防鼠対策の現状と今後の展望

・最新技術の導入:センサーカメラ、AI・ドローンの活用

センサーカメラやAI、ドローンを活用した対策が近年注目されています。センサーカメラはネズミの動きを感知して動画撮影するもので、撮影と同時にアラートを発するものもあります。AIはネズミの行動パターンを分析してくれます。ドローンは、広範囲の監視や、アクセスが難しい場所の調査アイテムとして検討されています。センサーカメラの活用は浸透してきましたが、AIやドローンも近い将来には活用が進むと予想されています。

・スーパーラット問題とその対策方法

スーパーラットとは、殺鼠成分が効かないネズミ個体のことを指します。この問題に対応するためには、第二世代殺鼠剤を使用するか複数の防除手法を組み合わせた総合的な対策(IPM)が必要です。例えば、物理的防除と環境的防除を強化し、ネズミが生息しにくい環境に変えていく手法です。

7. 防鼠対策の運用管理と定期的なチェックポイント

・効果を持続させるための運用管理方法

防鼠対策の効果を持続させるためには、定期的な点検とメンテナンスといった予防管理が重要です。トラップや超音波防鼠器は定期的に点検し本来の性能が発揮できる状態にしておき、必要に応じて再配置や交換を行います。また、施設内外の3S(整理・整頓・清掃)を徹底し、ネズミの隠れ場所や餌となる食品残渣を徹底的に除去します。

・モニタリングの重要性と具体的なチェック項目

工場内に新たなネズミの生息痕跡がないか定期的にモニタリングします。精度が高いほど異常(ネズミの侵入)の早期発見につながり、被害を最小限に食い止めることができます。具体的なチェック項目としては、糞や足跡の有無、経年劣化に伴う建物の隙間や配管の状態、3S(整理・整頓・清掃)の推進状況などが挙げられます。

モニタリング用トラップイメージ

8. 事例で見る成功した防鼠対策の実践

・他社の導入事例と成功ポイント

ある食品工場では、専門業者を交えたプロジェクトチームを結成し、徹底した調査をもとに防鼠対策を実施し、ネズミの生息数を大幅に減少させることに成功しました。この工場では、専門業者による調査とオンライン監視でネズミの行動をリアルタイムに監視し、状況に合わせて有効な対策を講じ続けました。成功のポイントは、ネズミの生態を熟知した専門業者による知見に加え、最新技術を積極的に取り入れ、状況に合った対策をチーム活動として行ったことです。

9. まとめ

食品工場における防鼠対策は、企業の信頼性やブランドイメージを守るために欠かせない取り組みです。防鼠対策はネズミの生態や専門アイテムについての知識、経験に長けた専門業者とタッグを組み、適切な管理をすることで効率的に効果的に実施することができます。

参考文献

・本記事中の図について、「※イメージ」以外はすべてイカリ消毒より